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エスカレーターの片側空けという文化に翻弄された世代

運用スタッフTNです。

毎日の通勤に地下鉄を使用しています。

ホームと地上を繋ぐ長いエスカレーター。

エスカレーターで歩かないというルールを守りながら、二列で乗らず片側を開けて長蛇の列をつくる乗客達。

なんとも滑稽な景色だなと思います。

昔はルールが逆だった

皆さんは普段どのようにエスカレーターに乗りますか?
「エスカレーターで歩いてはいけない」このように案内されていますので、真面目な皆さんは歩かず立ち止まって乗られている事と思います。
若者世代にいたっては、エスカレーターで歩かないのは同然のマナーとして定着しているのでしょう。

しかし我々の世代はちょっと複雑です。
何故なら、昔は「急いでいる方の為に片側を開ける」事こそマナー、なんなら鉄道がアナウンスまでしていたからです。

1990年代はエスカレーターのマナーが定着しておらず、当時のデパートや鉄道会社が片側を開けるアナウンスを行い、ルールを定着させていきました。
新聞などのメディアでも片側空けを美徳とし報道していたのがこの時代。
そんな時代を生きてきた我々世代にとっては、エスカレーターで片側を空けない人こそマナーの悪い人という先入観が植え付けられてしまっているのです。

風潮が変わりだした背景

この風潮が変わりだしたのが2010年前後辺りでしょうか、エスカレーターを歩くのは危険という考えが徐々に浸透しはじめます。

1990年代の日本はまだまだバブル期の風潮が強く、時間と効率こそ優先されるべきものという考え方が社会には蔓延していました。
その結果、エスカレーターで待ちぼうけをくらわないように片側を開けようというルールが支持されたそうです。
しかし時代とともに日本は成熟期を迎え、弱者によりそう考えにシフトしていきます。
エスカレーターで歩く事は危険、周りを事故に巻き込み怪我をさせてしまう場合もあるなど、エスカレーターで歩く事はマナー違反とされました。
以前とはまったく逆の考え方となったのです。

植え付けられた価値観や習慣は簡単には変わらない

感受性豊かな年頃の経験、そこで培われた美徳意識はそう簡単に変わるものではありません。
社会がそういうルールだからというのは解りますし、当然守らなければいけません。
しかし、心の中ではそういったルールを唱えだした何者かを快く思えず、エスカレーターを歩く人間を敵視する者がいれば反感の気持ちを覚えてしまう時もあります。

片側を開けながら長蛇の列を作る乗客、急ぎたいからと逆側を歩いてのぼる乗客、その乗客をワザと進ませまいと逆側を塞ごうとする乗客。
謎の三つ巴の攻防が巻き起こる朝の通勤ラッシュ、一体誰が正義なのかと疑問を抱いてしまいます。

ルールを変えるのであればそれ相応の対策が必要なのでは?

そんなモヤモヤした気持ちで使用しているエスカレーターですが、一番思う事は、

片側を空けず2列になって乗ることを何故推奨しない?

という点です。

歩くと危険だから立ち止まりなさい、良しとしましょう。

ここまでならいいんですが「片側を空ける」が無くならないから余計に混雑してしまいます。
むしろ最も混雑する手法が、今日の都心部のターミナルとなる各駅で毎日のように行われているわけです。

事故や怪我を防ごうという考え方は大切ですし、すばらしい事です。
ですが、その結果非常に効率の悪い社会になってしまうのであれば、やはりそこには問題があるのではないでしょうか。

目指すべき理想と現場のギャップ、これを補って改善していける人物が現れない限り事態は収束しないのではないかと、毎朝の光景を眺めながらそんなことを考えます。
大義名分を唱えるだけなら簡単、それを実現するにはそれ相応の準備と対策が必要不可欠。

そして、これはエスカレーターだけでなく、我々の日々の仕事でも同じ事が言えるなと、ふとそう思わされる出来事でした。

運用スタッフTN