――人とテクノロジーが共に成長していく時代へ
昭和時代の営業 ― 「人とのつながり」がすべてだった時代
営業部のTAです。
昭和の頃の営業といえば、「足で稼ぐ」「顔を覚えてもらう」といった言葉がよく使われていました。
携帯電話もメールもなかった時代、営業活動の中心は“直接会って話すこと”でした。 訪問や電話でのアポイント、資料の手渡し、時には夜遅くまでの商談。 そこには「人と人との関係を築く」ことへの強い信念があったように思います。
もちろん、効率的とは言い難い部分も多くありました。 移動時間や待ち時間、先方の都合で無駄足になることもしばしば。
それでも、当時は営業担当者が「情報を持っている人」だったため、 企業にとって営業は不可欠な存在でした。 商品やサービスを知るきっかけが“営業マン”だったのです。
AIという技術が生まれてきた背景
時代が進み、インターネットが普及すると、 お客様は自分で商品情報や口コミを調べられるようになりました。 情報の流れが一方通行から双方向になり、 「営業を通さなくても買える」世界が広がっていきました。
こうした流れの中で登場したのがAI(人工知能)です。 AIは最初こそ研究や分析の分野で使われていましたが、 近年は営業やマーケティングにも活用されるようになっています。
特に、生成AI(ChatGPTのような技術)の登場によって、 文章を作ったり、顧客データをもとに提案を組み立てたりすることが 驚くほど自然にできるようになりました。 人の手では難しかった「大量のデータをもとにした最適化」が、 瞬時に行えるようになったことが、AI普及の大きな要因の一つです。
営業の仕事はこれからどう変化していくのか
AIが活用されるようになったことで、 営業のスタイルも少しずつ変化し始めています。
たとえば、
- AIが顧客の過去の行動をもとに「今、興味を持っている商品」を予測する
- 自動的に提案メールを作成し、反応率の高い文面を分析する
- 商談の記録を整理し、次にどんな話題を出すべきかを示唆する
こうした仕組みが少しずつ現実になっています。
結果として、営業担当者が時間をかけていた事務的な作業や 「数を打つ」活動の一部は、AIによって効率化されていくかもしれません。
ただし、これは営業の価値が減るという話ではありません。 むしろ、“人にしかできない部分”に集中できるようになるという見方もできます。 お客様の悩みを深く理解したり、言葉にならない感情を汲み取ったり。 そうした領域は、これからも人が担う大切な役割であり続けるでしょう。
営業という仕事はなくなるのか?
AIの進化に伴い、「営業職は将来なくなるのでは?」という声を聞くこともあります。 確かに、定型的な説明や資料の提示など、 一部の業務は自動化が進むかもしれません。
しかし、営業という仕事の本質は「人と人との信頼関係を築くこと」にあります。 AIは情報を整理したり提案内容を作成したりは得意ですが、 「なぜこの提案を今するのか」「お客様が本当に求めていることは何か」 といった背景まで理解することはまだ難しいといえます。
人が最終的に何かを決めるとき、そこには感情や信頼が関わります。 この「感情の橋渡し」は、AIには代替しにくい領域です。 その意味で、営業職そのものがなくなるというより、 営業の役割が変わっていくと考える方が自然でしょう。
これからの営業に求められる姿勢とは
AIが営業をサポートする時代だからこそ、 営業担当者には新しいスキルや考え方が求められるようになっていくと思われます。
① データを味方につける
これまで経験や勘で判断していた部分を、 AIがデータとして可視化してくれるようになります。 その結果をうまく読み取り、仮説を立てて行動に移す力が大切です。 数字を扱うことが苦手な方も、少しずつ慣れていくことが 営業活動の幅を広げるきっかけになるでしょう。
② AIを使いこなす
AIは“勝手に賢くなる魔法の道具”ではありません。 どういう情報を与えるか、どう指示を出すかで結果は大きく変わります。 つまり、「AIを正しく育てる意識」を持つことが重要です。 日々の商談記録や顧客情報の整理を丁寧に行うことも、 AIの精度を高める一歩になります。
③ 共感力と人間らしさを磨く
AIがどれだけ進化しても、「人の気持ちに寄り添う力」は人にしかありません。 ちょっとした言葉選びや、相手の状況を想像する力。 それが営業にとって最大の価値であり続けるはずです。
おわりに ― AIと共に進化する営業へ
昭和の営業が「気持ちと根性」で支えられていたように、 これからの営業は「テクノロジーと共感」で支えられる時代になるかもしれません。 AIの登場によって、営業の仕事は“減る”のではなく、 “より人間らしい部分に集中できる”方向へと進化していくと考えられます。
AIをうまく使いこなし、 お客様にとって本当に価値のある提案ができる人こそ、 これからの時代に求められる営業像ではないでしょうか。 人とAIがそれぞれの強みを活かしながら、 より良い関係を築いていく――。 そんな未来が、少しずつ現実になりつつあるように思います。
文:営業部TA